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ふっくら白い粉をまとった「山のふもとの裾模様」は丹精した証!地区が一丸となってつくる飴色の宝石 「まるはたほし柿」づくりを体験してきた。

名所

島根県松江市と安来市との境界にそびえる京羅木山の中腹に位置する、松江市東出雲の畑地区。
高台にあるこの集落には一戸一戸に変わった建物が備わっています。
木造で、大きな窓がある3階建の広い小屋。通りすがると、「一体なんだろう?」と気になっていました。

冬の風景。この建物は一体…?

「秋になるとすごいよ!」と教えてもらい11月中旬に取材にお邪魔すると、鮮やかな柿色が目に飛び込んできました。柿色の玉すだれがのぞく、この建物は「柿小屋」と言われ、ほし柿を干すためだけに使われる専用の小屋なんです!

11月中旬ごろにはこの景色!

現在集落のほとんど、17戸が柿農家で、「畑ほし柿生産組合」として、「まるはたほし柿」のブランドでほし柿を生産しています。
その歴史は深く、200余年前の文化6年(1809年)に、柿小屋建造の記録が残っているそうです。

まるはたほし柿とは?

ふっくらと琥珀色の宝石のようなまるはたほし柿(インスタグラムより)

土づくりにもこだわり、除草剤も一切使わずに育った柿を無添加、無着色でほし柿に加工。安心安全で丁寧に作られているからこそ、とても美味しく、驚くほどしっかりとした甘さがあるのに、後味がすっきり。そしてなんといっても、中海から京羅木山に吹き上げる風が、柿の栄養や風味をおいしく凝縮してくれます。

高台から中海を望むロケーション

「まるはたほし柿しか食べられない!」というお客様もいるほどで、その品質の高さは「本場の本物」「100年フード」「地理的表示保護制度」の認定産地になっていることからも伺えます。2015年にはミラノ国際博覧会に出品し、高い評価も得ました。

今回取材させていただいたのは、「畑ほし柿生産組合」の農家のうち一軒の12代目、森廣加奈子さん。これまでは別の仕事をされていて、2022年に家業であるほし柿づくりに本格的に参加するように。丸一年本格的な柿仕事をしてみて「あっという間」と振り返ります。剪定、土づくり、摘果、収穫、加工、出荷と、一年中仕事があります。

摘果から収穫、ほし柿体験

今回は、そのうち、摘果と収穫、ほし柿加工(リンつみ、リンまわし)体験をさせていただきました!
摘果は夏に行います。教えてもらいながら少しだけ摘んだのですが、どの柿を残して、どの柿を摘むか、説明していただいても難しく、これをスピーディーにやってのける森廣さんとお父さんの技を見て感動しました。

夏のある日、森廣さんのお父様に摘果のレクチャーを受ける。一つの枝に3つ果実を残した状態が、柿が大きく育つ理想のかたちだそう。

実はこの摘果、初夏に事前取材させいてただいた際、お話しを伺うだけのつもりが、「摘果してみますか」とご提案いただき挑戦させてもらいました。そして、11月、改めて取材に訪れた際に、私が摘果した枝から柿をとって加工しましょうとのお話が! あの時の枝に目印をつけておいてくださり、収穫せずに残していただいていたんです。

私は15個ほど収穫したのですが、これはたくさん取ったら重くて大変そう。

リンつまみ。「リン」とは柿のヘタの部分のことで、ここをT字にカットします。干す際に紐に吊しやすいように、長さや太さを調整します。

作業は柿小屋の1階で。シーズン中でお忙しい中、丁寧に教えてくださいました!

リン回し。ここの皮を機械で剥いておくことで凹凸が減り、皮が剥きやすくするのだそうです。
刃物が回っているところにサイズの合う柿を差し込み、剥けたところで抜く。これもけっこう加減が難しい。

ここまでやって、あとは自宅で皮むきと干しを行います。

家に帰ってから皮を剥き

外に干してみました

…が!

「雨が降ったら取り込んで、風通しの良い場所で扇風機をあてる。干しっぱなしにしないのが、綺麗なほし柿をつくる秘訣」と教えてもらい、私なりに家の中と外を行き来しながら干しても、なんだか色がくすんでしまう…(恥ずかしくて写真も撮れません)。

理想の「柿色のふっくらした波に白い粉(天然の果糖が結晶化したもの)が乗っている状態」には程遠い…。あと少し干す期間があるので、なんとかキレイに育てていきたいなと思います。

畑地区の農家がつくったほし柿を一括して出荷している「畑ほし柿生産組合」では品質管理を徹底されています。画像のような衛生管理はもちろん、農家ごとのクオリティーを統一し、維持するのは本当に大変なことだと、体験してみて、より実感しました。

美しさとおいしさの理由

今回取材してみて、森廣さんたち農家の方だけでなく、ほし柿づくりを支えるスタッフの一人一人までに浸透していると感じたのが、「美意識の高さ」と「柿を愛していること」。作業風景の写真を撮らせていただいていると、「こっちの柿がキレイだから、撮って!」などと皆さんが教えてくれたり、お話しを伺っていると「キレイにできると、柿の表面が『山のふもとの裾模様』のようになるのよ!」と、目をキラキラしながら語ってくださったり。

たくさんのスタッフがそれぞれの仕事に向き合う

森廣さんの柿小屋だけでなく、生産組合の農家一軒一軒が同じ気持ちで仕事をされているから、美味しくて美しい「まるはたほし柿」ができるのだと感じました。

「自分のひと世代上の先輩たちは、色々な認証をいただいたり海外に進出したりと、開拓の世代。わたしたちはそれを守り抜き、次にバトンタッチしていきたい。この景色を見ると落ち着きますよね。100年後にも残していきたいですね」と語っていただいたとおり、このほし柿も、景色も宝物のように、これからも皆さんに大切にされていくのだと思います。

太陽と風、土、そして人。
すべての要素が揃って作り上げた「まるはたほし柿」は、一粒一粒が大きく、ふっくら、しっとり。琥珀色の宝石を覆う山のふもとの裾模様のような白い果糖は、丁寧に作られた証です。
ぜひ、ぜひ、一度食べてみてください。
そして秋には、絶景を見に畑地区に足を運んでみてくださいね。

それ以外のシーズンにも、柿小屋(ロケーション抜群!)を利用したイベントなどを精力的に行っていたり、柿の木のオーナー制度(大人気!)も行っているので、組合のSNSもぜひチェックしてみてください。

次回は…今回書ききれなかった、ほし柿を使った畑地区の郷土料理「孔雀玉子」の秘密に迫ります!
後半の記事はこちら

【畑ほし柿生産組合】
所在地:島根県松江市東出雲町上意東畑816番地
URL: https://www.hatahoshigaki.jp/

インスタグラム:https://www.instagram.com/maruhatahoshigaki/


※お問合せ・イベント情報等は上記インスタグラムのDMまで

fujiko

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大阪から鳥取へ引っ越して7年目のフリーランスデザイナー、水引作家。ものを作ること、美味しいものが好き。松江には、仕事や遊びで月一くらいのペースで訪れます。

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