「路上」からいただいたご縁で自分を励まし、成長する機会に。【筆で島人と心を通わせる旅。路上詩人こーたさんと隠岐。前編】
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「あなたを見てインスピレーションで言葉を書きます」
お客様と相対して詩を紡ぎ出す「書き下ろし」活動と、斬新な書道パフォーマンス。松江を拠点に活躍される路上詩人こーたさんの表現方法です。
松江歴史館で定期的に個展を開き、2019年には松江の観光大使となるなど、地元ではもちろん、県外でも知名度が高まっています。
今回は「松江のこしらへ」番外編として、3月25日に発売される、広島のタウン情報誌「TJ Hiroshima」4月号の特集ページ「路上詩人こーたと行く! 隠岐御島印旅」とタイアップして記事を作成しました。
前編は路上詩人こーたさんのご活動と隠岐養護学校で行われた書道パフォーマンスの様子をご紹介します。
一本の筆から人々に送るエール「書き下ろし」に密着
路上詩人こーたさんの存在は以前から知っていて気になっていたのですが、お会いする機会はないままでした。
「インスピレーションで言葉を書きます」とは、どのように行うのか。なぜ「路上詩人」という肩書きなのか・・・。聞きたいことはたくさんありました。
松江城を中心に9月中旬から10月上旬に行われるライトアップイベント「水燈路」でご挨拶したのがお会いしたきっかけでした。
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「水燈路」では「書き下ろし」の活動を見学させてもらいました。
内容はとてもユニークです。長机に墨と硯、筆と一枚の色紙が置かれています。机を挟んでお客さまとこーたさんが向かい合わせで座ります。
こーたさんから「はじめまして」と挨拶程度の会話をし、お客さまの名前を聞きます。
「僕の目を見てもらっていいですか?」と、初対面のお客さまと5秒から10秒ほど見つめ合います。
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筆を取り、机に用意している色紙に、一心不乱に、30秒ほどの短い時間でお客さまから得たインスピレーションを言葉に落とし込み、お客さまに送る詩を一気に完成させます。
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お客さまに向けて書いた詩の意味をこーたさんが説明し、色紙を渡します。
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自分探しにもがき、たどり着いた「路上」という舞台
「最初は文字を書くことが下手で、詩を紡ぎ出すのも時間がかかりました」とこーたさん。「書き下ろし」をはじめたきっかけは「自分でも何か人を喜ばせることはできないか」という思いから始めたそうです。
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約10年前、こーたさんが様々な仕事に就きながら長続きせず悩んでいた頃、ある本との出会いがありました。それが、路上で人々に詩を綴り、前に一歩進めるようなメッセージを相手に与え喜ばせている表現者の本でした。
そこからヒントを得たこーたさんは、自分も松江駅前の路上に座って詩を書き、「人に詩をプレゼントする」ことを思いつき実行したそうです。
書道の経験が学校で習った程度で、全く素人の状態からスタート。最初は筆で文字を書くことすらままならない状況でしたが、雨、風の日も路上に座り、活動をやめませんでした。
すると、自分を見て応援してくれる人が出始め、時には自分の方が励まされる体験も多かったそうです。
今まで感じなかった人との心の交流を、路上に座り活動することから数多く経験してきました。
こーたさんにとって「路上」は自分の活動の原点であり、自分と他者が繋がる「舞台」でもあるのです。
チャレンジし続けることで広がった人のご縁-隠岐養護学校でのパフォーマンス-
隠岐養護学校とは以前、生徒さんが松江に来られた時にこーたさんと出会ったのがきっかけで交流が生まれ、今回の隠岐旅で再会が実現しました。
隠岐養護学校は全校生徒数23名。小学部から高等部まで一つの学校で学んでいます。
午前中、体育館にこーたさんが登場すると、先生や児童生徒のみなさんから歓迎の声があがりました。
体育館正面の壁に特大の書道紙を這わせ、厳かに準備を始めます。生徒さんたちも用意された椅子に皆着席し、教頭の秋山健二先生とこーたさんの簡単な挨拶の後、パフォーマンスは始まりました。
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大きな真っ白い書道紙に向かって、大きな筆で勢いよくまず一文字を書くこーたさん。
生徒さんも迫力に圧倒され、何が書かれるのかを見入っています。
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こーたさんがその日、皆さんに力強くメッセージとして書いた文字は魅力の「魅」。
まるで「魅」の文字が紙面を這うようにダイナミックで、見ているこちらも思わず唾を飲み込みます。それから右上のスペースに詩のメッセージを細い筆で足されました。
「百点満点って全問正解のことじゃない
君の持ってる力を出しきり楽しんで進むこと
持ってるものを魅力と呼ぶ」
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メッセージを添えられ、最後に力強く印を押されました。
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パフォーマンスが終わると体育館の中に拍手喝采が起こります。
こーたさんはそれから一言お話しされました。
「生徒さんはこれから社会に出て、様々な経験をします。それは自分にとって楽しいこともあれば辛い、苦しい時もあります。が、誰しも必ず何か一つ自分の魅力を持って生まれてくるものです。その魅力を辛い時でも忘れないで全力で物事を楽しんで欲しい。そんな思いを込めて「魅」という字を選びました。」
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ご自身が社会に出た際に、「自分とは何者か、他者に対して何ができるのか」をとことん考え抜いた経験があるからこそ、生徒さんに伝えられたメッセージでした。
こーたさんの活動のこれから
インタビューする時間を取っていただきました。その際に「これからやってみたいことはなんですか」と質問しました。
すると「地元、松江で活躍できる次世代のアーティストやクリエイターを育てたい」と答えが返ってきました。
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現在、こーたさんは地元の同世代のアーティスト達有志とともに高校生のアート活動などを応援するチーム「STA※」の代表を行っています。
「『夢を追い求めれば、必ずチャンスは掴める』ことを自分という存在を通して若い世代にも分かってもらいたい。また、自分自身も毎日何かにチャレンジし、自分の成長が周りの方の幸せに繋がるようになれば」とおっしゃいました。
※ STA・・・”松江をアートで夢を叶えられる街に” という想いで、松江を拠点に活動する5人のアーティストチーム。地元の高校の美術部や書道部など次世代の若者も巻き込み、アートを通して松江の魅力を発信している。
こーたさんに次ぐ世代のアーティストが松江に現れる日も、そう遠くはないかもしれません。
筆一本で人を繋ぎ困難にめげることなく、信念を貫く。
サムライのような存在、路上詩人こーたさんのさらなる挑戦を期待しています。
中編・後編は、「TJ Hiroshima 御島印隠岐旅」のスペースではご紹介できなかった、訪れた隠岐3島の郷土愛あふれる人たちとの出会い、歴史、文化の魅力にもたっぷり迫った内容にしております。
ぜひご期待ください。
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路上詩人こーた
路上に座り「あなたを見てインスピレーションで言葉を書きます」という独特のスタイルで、筆を用いて言葉を書き下ろす活動を行う。日本のみならず、フランスや台湾などの路上でも言葉を届け、これまでに1万人以上の人へ笑顔や勇気のエールを送る。2019年、松江観光大使となる。
https://kotaishida.com