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「ジオパーク」は地球を知る大切なメッセージ! 「隠岐自然館」で島の貴重さを学ぶ。【筆で島人と心を通わせる旅。路上詩人こーたさんと隠岐。中編】

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今回は「松江のこしらへ」番外編として、広島のタウン情報誌「TJ Hiroshima」の特集ページ「路上詩人こーたと行く! 隠岐御島印旅」とタイアップして記事を作成しました。
中編は隠岐の島町にある「隠岐自然館」に路上詩人こーたさんが訪れ、この地域が2013年に登録された「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」について楽しみながら学んだ内容を紹介します。

「路上」からいただいたご縁で自分を励まし、成長する機会に。【筆で島人と心を通わせる旅。路上詩人こーたさんと隠岐。前編】はこちら。

前編は路上詩人こーたさんのご活動を中心に紹介しました。中編・後編はこーたさんが隠岐を訪れ、隠岐で得たインスピレーションを書にし、現地の人に色紙をプレゼントした旅をお届けします。
隠岐3島(隠岐の島町、海士町、西ノ島)を訪れ、様々な現地の方にご案内していただきました。皆さんの郷土愛がこちらまで伝わり、幾度も心を動かされた旅でした。「TJ Hiroshima」の誌面に加えて、さらに隠岐の魅力を深掘りしてお伝えしたく、本記事で掲載することにしました。

最初に、路上詩人こーたさんが訪れたのは隠岐諸島最大の島、隠岐の島町。島の玄関口、西郷港のすぐそばにある「隠岐自然館」を訪れました。2階の館内展示を一周回るだけで、隠岐の地層・地形から見た地球の成り立ち、土地の生態系の貴重さ、島人の営みなど、この土地が「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」として認定されている理由が分かる内容になっています。

隠岐自然館2階正面入口からの風景。中央には大型のモニターやプロジェクションマッピングがあり、隠岐4島(隠岐の島町、海士町、西之島、知夫里島)の地図が映し出されています

今回は現地にお住まいの、一般社団法人隠岐ジオパーク推進機構の事務局長である野邉一寛さんに同行してもらい、「隠岐自然館」と周辺にある神社、玉若酢命たまわかすみこと神社と水若酢みずわかす神社、2社を特別にガイドしていただきました。

隠岐自然館の展示ブース。野邉さん(写真右)の面白いお話に夢中になるこーたさん

地質・生物・歴史。様々な要素がギュッと詰まっている隠岐

隠岐の陸域と周辺の海域1kmが認定されている「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」の概要について、野邉さんがお話されました。
「『ジオパーク』と聞くと、地層や崖など石のイメージが大きいと思いますが、地質学的に重要なだけではなく、動植物の生態系や、そこで暮らす人々の歴史や文化などもジオパークを構成する大きな要素となっています」
今まで「ジオパーク」について「遥か昔の地層が見えるところ」というぼんやりとしたイメージしかなかった、こーたさんや取材をしている私たち。
冒頭から意外な内容を持ち出す野邉さんの語り口に、すっかり引き込まれていきました。
野邉さんは、「『ジオパーク』の本当の面白さは隠岐にある物事や事象の『なぜか』を紐解くことにあります」と言いながら、流暢にお話を進めて展示を案内していきます。


隠岐の地質の特徴や植生に関わるコーナーに回ります。独自の植生に「なぜ」と疑問に思う要素がたくさん詰まっています。平地にも関わらず高山植物が見られたり、北海道から九州、沖縄に植生する植物が同時に根付いていたりする土地なのです。
不思議な生態系を保っている要因のひとつとして、約10万年の周期で地球が寒暖期を繰り返していることがあります。
隠岐は氷河期の時代に海水面の低下によって島根半島と陸続きになりました。この時に本州の植物たちは寒さから生き延びるために、海流の影響で比較的に暖かかった隠岐に移動し、隠岐は植物の「逃避地」として機能しました。その時代にやってきた冷温帯、亜熱帯の植物は、周辺の海流や地質の影響で夏と冬の寒暖差が比較的少ない隠岐で生き残ることができたと考えられています。
今から約1万年前の温暖期に海面が上昇し、避難した植物はそのまま隠岐にとどまりました。

驚くことに年中、アジサイの花が見られるところもあるそうです。

隠岐の生態系を伝える展示コーナー。本州の杉も隠岐に移動したんだそうです
隠岐にしか生息しないオキノウサギの剥製。坂道の多い地形に対応するため、後ろ足が他種のウサギより発達しています
日本海の豊かな海洋資源を伝えるコーナー。様々な標本の完成度が高く、圧倒されます

森を紹介するコーナー、海の生物を紹介するコーナーなどきれいな展示物に目を奪われて足を進めていると、中盤から隠岐の歴史に触れるコーナー展示があります。
歴史でも「なぜ」と疑問に感じることがたくさんあります。

例えば、鎌倉時代から室町時代にかけて倒幕運動を起こした天皇は2人も隠岐に流されていることです。
その理由には、離島でありながら天然資源が豊富にある立地条件と、高貴な身分の天皇を処罰することで、天変地異などの祟りにつながるのを恐れる人々の習慣がありました。
隠岐は、山から湧き出る水によって稲作もされているため、食糧も豊かにあります。天皇が流刑になっても、きちんと生活できる場所でした。
方位学の面でも、隠岐は都から見て、北西の吉兆をもたらす良い方角に位置する場所でした。

奈良時代から地元の人に守られている、海士町にある「天川の水」。「日本名水百選」に選ばれている

様々な文化・神々が持ち寄られ、150社以上の神社が建てられた離島

次に、自然館を離れて周辺にある神社を案内していただきました。
野邉さんは、隠岐自然館で隠岐全体の概要やジオパークについて説明をした後に必ずお客さまを神社に連れて行くそうです。
それは、お客さまに歴史上のお祭りなどを説明したあと、「なぜここに神社があるのか」を考えてもらうためだと言います。隠岐には神社が数えられるところで150社以上もあるそうなのですが、隠岐の神社の特徴は色々な地域の神様が祀られているところです。現地で採れる良質な黒曜石を求めて隠岐に来た古代人が、自分たちが祀ってる神様を持ってきたと考えられています。

隠岐の開拓にかかわった玉若酢命(たまわかすのみこと)を祀る神社。毎年6月5日の御霊会風流(ごれえふりゅう)という、狭い参道を馬と人が一気に駆け上がる勇壮な馬入れ神事が行われます
玉若酢命神社にある、高さ約38mの八百杉。樹齢約2000年とも言われ、霊気さえ感じられます
野邉さんはガイド中に、聞き手に対して様々な質問を投げかけます。聞き手も一緒に考え、隠岐の魅力を知る仕掛けにしていることが印象的でした。
隠岐古典相撲の舞台がある水若酢神社にて。野邉さんのユーモアあふれるお話に思わず笑うこーたさん

今まで見た景色が違って見える。隠岐の自然から学ぶこと

野邉さんが、この地をガイドする理由について言われました。
「『ジオパーク』の地を訪れる本来の目的は、私たち一人一人が『地球を考える』『地球に寄り添うことを学ぶ』ためにあるのです。私もこの土地に住みながら、島外から訪れた人に、隠岐の自然の貴重さや、環境への意識を持ってもらうためにガイドを続けています」
今回、ガイドをしていただいたことで、単なる非日常の自然、文化、食を楽しむ「旅」ではなく、今ある環境をどうやって守るのか考え「気づき」につながる、とても貴重な機会になりました。

玉若酢命神社。鳥居の正面が向かい側の山とシンクロする位置に、意図的に建てられたそうです

路上詩人こーたさんが隠岐の島町から感じた「メッセージ」を書で披露

こーたさんは、隠岐の島町から感じたインスピレーションを筆を使い、文字に起こします。
色紙には力強く「進化」という字が書かれました。
自然館から学んだ「ジオパーク」のこと、そしてそれを守り継いでいる、野邉さんをはじめ島の人たちの郷土愛に触れた感動から、この2文字を選びました。

熱心に筆を取るこーたさん
野邉さんが所属している、ジオパーク推進機構の窓口で色紙が渡されました

「自然や歴史の荒波に揉まれながら柔軟に『進化』してきた隠岐の島町を知りました。この土地の豊さを次世代に残すには、私たちが日頃から環境に対して考え、行動することが重要だと感じました」と、こーたさんは野邉さんに伝え、色紙をプレゼントしました。

約600万年前の火山活動で大地が隆起して陸地になり、偶然もたらされた特殊な環境である隠岐。生態系の進化や、そこに住む人々の営みは太古の歴史から脈々と受け継がれてきました。
「ジオパーク」には、自分や子どもたちの世代がこれからも豊かに、健やかな世界で生きるには、と考えるきっかけになる、地球からのメッセージがたくさん隠されているように思います。

旅は後編に続きます。後編は、「海士町」「西之島」を訪れ、後鳥羽上皇と共に歩んだ島の歴史、摩天崖など雄大な自然に触れた内容になっております。ご期待ください。

今回路上詩人こーたさんが書いた書、「進化」は、「御島印」として隠岐の島町を
訪れた方にプレゼントされます。

※御島印とは・・・
松江・境港・隠岐観光振興協議会キャンペーンとして、隠岐4島に訪れた際にキーワードと引き換えにもらえる、路上詩人こーたさんによる「御島印」をオリジナルで作成しました。内容はこーたさんが隠岐旅で湧いたインスピレーションから書いた言葉。一つずつこーたさん直筆のものを各島限定100部ずつご用意します。


画像は、隠岐の島町、隠岐自然館にてキーワードと引き換えにもらえる「御島印」です。


ー松江・境港・隠岐観光振興協議会「御島印」キャンペーンー
以下の窓口でキーワードを答えるとお一人様につき、一枚「路上詩人こーた」書き下ろしの
御島印がもらえます。
【期間】令和6年3月25日〜 ※無くなり次第終了
【配布枚数】各100枚
【設置箇所】隠岐4島下記の施設窓口にて引き換えになります。
♦︎隠岐自然館→<キーワード>隠岐自然館
♦︎海士町観光協会(キンニャモニャセンター内)→<キーワード>島のさんぽみち
♦︎西ノ島町観光協会→<キーワード>国賀海岸
♦︎知夫里島観光協会→<キーワード>赤壁


【隠岐自然館】(隠岐の島町西郷港直結)
所在地:島根県隠岐郡隠岐の島町中町目貫の四61 隠岐ジオゲートウェイ2階
電話:08512-2-1583
営業時間:9:00〜17:00
定休日:第2・第4火曜日
駐車場:なし
利用料金:大人・500円、小人・250円
ホームページ:https://www.oki-geopark.jp/museum/

カワモト タマコ

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東京都出身。「島根県の工芸、技術を次の世にも伝えていきたい!」と一念発起し、グラフィックデザイナーから松江市協力隊の松江工芸の魅力を伝える仕事に飛び込む。出...

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