自分が楽しみ、みんなも楽しませることがモットー。
東出雲で陶芸家で画家でもある、ユニークな三島耕二さんに出会う。
松江市の中心部から近く、自然豊かで古事記に出てくるスポットもある歴史ある町、東出雲町。
そのような土地に根差し、風情ある古民家で作陶、器づくり体験、カフェ営業を行ういまみや工房のオーナー、陶芸家であり画家でもある三島耕二さんのところを訪ねました。
私が三島さんのお皿を見ていつも思うのは「この器に何の料理を盛ろう」と楽しくなる、使うのがワクワクする器づくりをされていることです。
三島さんの器との出会いは、松江城近くの島根県物産観光館2Fで作品を見たのがきっかけでした。ざらざらした土の風合いを生かしつつ素朴でおしゃれな器を見て、もっと作品を見たくなり、東出雲の工房を訪れてみました。工房は「衣食住」を大切にして活動している三島さんの世界観が凝縮され、穏やかでありながらセンスが溢れる空間です。さらに三島さんご自身の言葉で作品のこだわりを聞きたくなり、今回取材をお願いしました。
私が工房を訪れた際には、隠岐のお客さんに向けた贈答用のお皿セットがお座敷の上にずらっと並べてあり、直径25cmくらいの大きいサイズでとても存在感がありました。
「隠岐の人たちは大皿で料理や刺身を食べるから大きい丸皿と四角い皿が良いと思ってね」
と、三島さん。なるほど、隠岐でとれたての新鮮なお刺身が盛られているところがイメージできます。
元々絵描きだった三島さんが陶芸家になった背景
三島さんは以前油絵を専門に活動されていました。高校で絵の講師をし、絵画の授業の一環として陶芸も教えていたそうです。なぜ陶芸をメインに活動を移されたのかお伺いしたところ、元々土いじりが幼い頃から好きで「みんなに自分の作品を使ってもらって、楽しんでもらうことがしたかった」からだそうです。
また三島さんの表現活動の転機のきっかけとして30代の頃、一畑百貨店で「魯山人展」を見たこともあります。様々な素材を縦横無尽に使用し、表現した魯山人に衝撃を受けてから、陶芸の道に進むことを決意しました。
それから現在の東出雲の今宮に独立して工房を構えるまでになりました。
近年はご自身が立ち上げた団体「アーツクラフツしまね」を運営し、気のおけない作家仲間と楽しんだり、生き方、美意識を共有したりするコミュニティ作りにも関わっています。年2回、自分の工房で団体のグループ展も行なっています。
風土の自然や人の営みに根ざした美しさを追求する
三島さんは風土から生まれた手仕事に対して美しさを見出し、自らの創作活動に生かしています。三島さんの追求したい美しさとは、本来の「自然や人間の営みの美しさ」です。
自然の美しさとは、器の世界で例えるならばとろっとした釉薬の質感、ざらざらした土の肌合い、草いきれのこもる緑がある東出雲の風景をそのまま器に込めて作陶することです。
その土地の物、風土を使った器を作る、使う。それこそ人が「生きている」証であり、風土を離れてものづくりをすることは本来生きる道から離れることだと三島さんは言います。
三島さんの創作活動のこれから
三島さんの今後の活動について伺ったところ、「数を作るより自分の作りたいものをこだわって作りたい」そうです。例えば、粒子が荒い地元の土(今宮、持田)を混ぜ、わざとざらざらした素材の作品などに挑戦したいとのこと。
かつて民藝運動を立ち上げた柳宗悦は「下手物=みんなが気に留めない日常のもの」の中に美を見出しました。
「陶器も時として『雑器』と呼ばれますが、皆が使い勝手を無意識に感じて日常に使用する『雑器』を作ることこそ難しい」と三島さんが言っておられたのが印象的でした。
三島さんは常に少しずつ作風を変化されているので工房を訪問するごとに違った雰囲気があり、毎回新鮮な刺激を受けます。自らに挑戦し、変化し続け「美」とは何かを追い求め、それを仲間と楽しみながら共有してものづくりを進める姿勢が三島さんの創作活動の魅力であり、原点なのでしょう。
これからも「自分がまず楽しむ、周りのみんなを楽しませる」心を忘れない作品づくり、空間づくりに注力される三島さん。
今後のご活動、作品も一ファンとしてとても楽しみです。
【いまみや工房】
所在地:〒699-0107 島根県松江市東出雲町今宮320
電話:0852-52-2928
営業時間:10:00~16:00
定休日:水曜日、木曜日
駐車場:3台
URL: http://kimachikun.blog113.fc2.com
陶芸体験、カフェなども不定期で運営。詳しくはブログ、またはお問い合わせにて。