知られざる自然の宝庫! 片江の魅力と、個性あふれるオーナーが営む地元の拠点づくり。【大人の秘密基地、ゲストハウスかたゑ庵。前編】

ひと

松江の中心部から北東に車を20分ほど走らせたところにある美保関町、片江。人口500人程度の小さな漁村です。石州瓦のオレンジ色の屋根の人家がひしめく小さな入江に車を滑らせると、海への道中にカヤックがあります。それがゲストハウス、「かたゑ庵」の目じるしです。
今年の秋の始まりに、せっかく松江にいるのだから自然と触れ合う遊びがしたい、自分のやったことのない海のアクティビティを体験したいと友人と話していたところに「かたゑ庵」でカヤック体験ができることを耳にし、「かたゑ庵」に友人と共に訪れました。

カヤックと入り口の松が目じるし。

私が「かたゑ庵」に来るのは2度目でした。協力隊の研修にて初めてお伺いしたときには、とにかくアクティブなオーナー、青戸裕司さんが面白く、自分の話を熱く語り、人の話を良く聞いてくれるその姿がとても印象に残りました。いつかもう一度青戸さんの話を聞きに、そして片江の海に見に行こうと思っていたところでした。

オーナーの青戸さん。ゲストハウスのラウンジにて。

私は今回カヤック体験ツアーに参加しましたが、そちらは後編にて紹介します。前編ではまず青戸さんと「かたゑ庵」の魅力について触れたいと思います。


「青戸さんの語る片江、かたゑ庵の成り立ち」

「かたゑ庵」はゲストハウス、宿泊施設ですが、地元の方が気軽に集まる交流スポットにもなっています。
特徴はインスタグラムなどのSNS発信をしていないこと、青戸さんが全てゲストハウスを一人で運営していることです。SNS発信をしないことを不思議がる人も多いですが、青戸さんはSNSで偶然見つけるお客様ではなく、かたゑ庵の要素をwebの検索エンジンでテキスト検索する人、例えば「自然 きれいな日本海」「美保関 カヤック」「古民家 ゲストハウス」など情報を求めている人、口コミでかたゑ庵に来てくれる人を受け入れたいのが理由です。

また、一人で運営する理由は主に人件費の面からですが、結果的にお客様と直接関わる時間が増えて、様々な場面で協力し合う関係が出来上がるそうです。
そして「無いものは一緒に作ろう、楽しもう」というお客様が自然と増えてリピーターになり、良い循環が生まれます。例えば夜のバーベキューを一緒になって用意したり、イベントで青戸さんの手が足りない時は地元の方と共に総動員でお手伝いに回ったり。「片江を一緒に楽しむ瞬間」をつくり出せることができ、「オーナー」「お客様」の垣根を越えて交流できる場になります。

古民家を改装してゲストハウスに。目の前に片江の海が一望できる。

元々青戸さんは松江中心部に住んでいましたが、子育てをする環境を探して20年前に片江を訪れ、家を借りて10年片江に住み続けました。そして、片江の環境の良さを他の人たちにも伝えたい、ここで何かをして移住者の仲間を増やしたいという思いをきっかけにゲストハウス運営をはじめました。また、以前より国際交流、外国の方を自宅に招き入れるホームステイなどを積極的にやっていた経験を元に、「外国人が訪れるゲストハウス」を目指して「かたゑ庵」をはじめたそうです。
そして、古民家をゲストハウスに改装するためのクラウドファンディングをし、地元の方の応援もあり見事達成しました。

かたゑ庵にて楽しまれているみなさんの写真がラウンジに飾られている。

しかし、クラウドファンディング達成後すぐにコロナが世界中に蔓延。あえなく外国人を受け入れることはできなくなりましたが、それでも青戸さんはあきらめませんでした。

「コロナに負けない、地元の資源とアイディアを生かした魅力づくり」

青戸さんはコロナをきっかけに、ゲストハウスのコンセプトを、「インバウンドを受け入れる施設」から「地域資源を生かしてアクティビティができるスポット」としてお客様を日本国内のターゲットに方向転換しました。
その一つの例が、カヤック体験ツアーです。
島根半島・宍道湖中海ジオパークという自然保護区域に指定されている片江周辺の海は、見応えのある岩や、洞窟に溢れています。その中を案内する認定ジオガイドの資格を、青戸さん自ら取得。カヤックを先導しつつ周辺の自然をガイドをするツアーを作りました。
また、中海側の美保関まで続いている約2時間ほどの「片江古道」と呼ばれる道を、地元の有志のグループと一緒になって整備し、トレッキングできるようにしました。はるか昔は物流の要道として使用されていた歩道だったそうです。先人たちの自然豊かな暮らしを想像しながら楽しむコースになっています。
このように様々な角度から片江の自然の魅力を感じられるアクティビティを計画して県内外のお客様に伝えています。

ジオパークの自然が満喫できるカヤック体験。

「青戸さんが描く片江の未来」

片江の人口は減少しつつあります。その現実から目を背けずに青戸さんが大切にしているのは「かたゑ庵」が子育て世代に「移住」してもらうきっかけになれば、という思いです。
青戸さんの言う「移住」とは、子育ての時期に片江に来て借家で住む、ということ。
「『定住』はずっとそこに住み続けるのでハードルが高いです。子供も大きくなれば、進学もしなくてはいけないので、そうなると中心部の方が住みやすいかもしれない。しかし、幼少期に自然と共に生きる、学ぶことは人生において貴重な経験になる。一定期間の『移住』であれば、その両方が叶います。
縁あって「かたゑ庵」に来てもらっただけでも嬉しい。さらに片江という地域を気に入ってもらい、田舎に無いイベントや出来事は一緒に楽しみながらつくり出し、家族のようにかたゑ庵に関わる人たちを増やしていきたい。」とお話ししてくださいました。中には子どもが大きくなっても片江を気に入り、定住する人もいるそうです。

かたゑ庵はアットホームな雰囲気と、一緒に何かを楽しもうというワクワク感を訪れた人に思わせる、青戸さんが仕掛けた大人の秘密基地のようにも見えるところが1番の魅力です。
百聞は一見にしかず。少し足を伸ばしてかたゑ庵を訪ね、目の前に広がる片江の自然を満喫してみてください。きっと片江、そしてかたゑ庵が好きになるはずです。

入り口にある、ハンモックとバーベキューセット。

後編はカヤック体験の様子をお伝えします。

ゲストハウス かたゑ庵
場所:島根県松江市美保関町片江396
電話:0852-55-8600(ゴーゴーハロー)
https://kataean.com


カワモト タマコ

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東京都出身。「島根県の工芸、技術を次の世にも伝えていきたい!」と一念発起し、グラフィックデザイナーから松江市協力隊の松江工芸の魅力を伝える仕事に飛び込む。出...

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