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漆塗の絵付けを体験! 日常に豊かな彩りを添える、ものづくりをするひととき。 【松江の漆芸・八雲塗の魅力を伝える職人・長屋桃子さん。後編】

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→ポップでカラフル、今にフィットする漆器づくりで、伝統工芸に親しみを。 【松江の漆芸・八雲塗の魅力を伝える職人・長屋桃子さん。前編】はこちら。

前編は漆職人、長屋桃子さんのご活動とその想いについて触れました。
後編は実際に私が「八雲塗やま本」のお店にて、「八雲塗」の絵付けを体験した様子をお伝えします。

外から見た「八雲塗やま本」さん。創業は明治になるそうです。

早めにお店に到着したところ、長屋さんは店内の工房にて作業中でした。
真剣な表情に思わずシャッターを押します。

細かいお箸の絵付けに集中して取り組む長屋さん。

「出来上がりに想いが膨らむ! 絵付けするものと図案選び。」

「八雲塗やま本」にて漆の絵付け体験できるものは、箸から茶筒など、様々あります。体験料は絵付けする面積で変わり、一番お手頃なのは箸です。また、店内の無地の漆器を購入して絵付けすることもできます。
今回は十分絵付けを楽しめそうな「雅小手鏡」を選びました。 絵付けする図案は、お店が用意されている、八雲塗伝統の絵柄、「まが玉」や「兎」などから選ぶことができますが、持ち込みでオリジナルの図案で作ることもできます。
私は前もって自分でデザインした図案、唐草模様の中に「まが玉」を散らしたもので臨みました。
出来上がりを想像してみると、自分だけのオリジナル漆手鏡が完成するので、なんだかワクワクしてきます。

中央の黒い手鏡を左上の図案のように絵付けしていきます。左側にあるのが顔料の入った色漆。

「漆の絵付け作業には欠かせない、大切な下準備。」

漆の絵付け体験は、基本的に長屋さんがわかりやすくマンツーマンで教えてくださいます。気鋭の職人さんを独り占めできる、とても贅沢な時間ですね。

すぐに漆を塗る作業に取り掛かかるものと思っていたら、その前に下準備が必要でした。
まず初めに、図案をトレーシングペーパーに鉛筆描きしてなぞります。
その下書きの上に、水で溶いた胡粉(日本古来の着色料)を細い筆で載せて、二重に図案をなぞります。

トレーシングペーパーに胡粉を含めた液で図案を描いた状態。

次にそのトレーシングペーパーを、漆の塗面上にヘラで擦りつけて胡粉の粉を写し、絵付けの際に筆をすすめる道標とします。この一通りの作業は「置目」と言います。

「置目」の作業を行なった状態。うっすら図案が分かります。

「いよいよ漆の作業スタート! 鮮やかな色漆で彩ります。」

「置目」を終えたら、いよいよ漆を使って絵付けしていきます。
絵付け用の細い筆に色漆を含ませて、胡粉の線をなぞっていきます。
最初に図案の中の一つ、「まが玉」に色を塗っていきます。 「まが玉」の真ん中の穴は塗らないように残すので意外と難しいですが、普段使用できない素材、漆で絵を描いている楽しさがあります。

長屋さんがお手本に「まが玉」を描いてくださいました。

色漆の色によって硬さや塗りやすさが違うので、絵の具で色を塗る作業より筆の進みが重く、力の入れ具合にコツがかなり必要になります。
次に、唐草模様を入れていきます。こちらも筆で均一に線を描くのは慣れないですが、集中して一心に線を描く瞬間、他のことを考えず、没頭できて楽しいです。また、作業が進むにつれて、手鏡の黒い塗面がどんどん鮮やかになっていくのに面白さを感じます。

唐草模様より先に描いた「まが玉」の間の線を描くには、筆使いのコツが必要です。

「ようやく完成! 店内に並ぶ漆器の素晴らしさを再認識。」

仕上げに、唐草模様の葉と飾りを入れてなんとか絵付けは終了しました。
制作時間は2時間半ほどでした。絵柄が簡単であれば、もう少し短時間で終えることもできます。

線はいびつですが、ほぼ元の図案と同じように描けました。

体験が終わってみると、工房という、普段味わえない環境で集中した作業をしたからか、頭がクリアになって清々しい気持ちになります。
そして、再び店内に置いてある作品を眺めると「どうやって作っているの?」と思うほど繊細で美しい、緊張感ある漆器の数々に改めて驚かされます。

長屋さんがデザインした、椿の可愛らしいお椀。体験後に見ると作業工程が知りたくなりますね。

絵付けした作品は乾燥させて表面を磨く作業が必要なため、その後は長屋さんにお任せします。
そして、体験してからおおよそ一週間後に作品は出来上がります。受け取りは郵送でお願いするか、お店に直接伺います。

下の写真が完成した作品です。

完成品は丁寧に「八雲塗」の箱に入れてくださいます。

今回は黒漆の下地が出来上がっているものに絵付けしましたが、通常の八雲塗は木地に下地の漆を塗り、絵付けしてからその上に、透漆を重ね、表面を磨く作業をします。透漆が乾く時間も見る必要があるため、完成まで約3ヶ月〜半年かかるお品もあるそうです。
体験するものは透漆の工程は省いているそうですが、それでもかなりの時間と技が費やされていることを実感できました。漆器がなぜ値打ちがあるのかも納得できます。

八雲塗の工程を解説した見本。工程を経るごとに椿が立体的になっていくのが分かります。

「手鏡を使って感じた、日常のちょっとした変化。」

今回、自分で絵付けした手鏡にとても愛着が湧きました。さらに使う瞬間は、不思議と心にゆとりを持てるようになったのです。次回は食事にも余裕を持ちたいので、お箸にもチャレンジしたいです。
自分で絵付けしたお箸で食べるご飯はきっといっそう美味しく、食事の時間は、より大事に感じられることでしょう。

長屋さんが制作途中のお箸。繊細な線が美しいです。

この絵付け体験はお客さまからの評判が高く、「あまりない機会だから楽しかった」「漆器を身近に感じるようになった」という方も多くいらっしゃるそう。さらに、「こんなに色づかいができるのに驚いた」「体験すると絵付けされた漆器の見え方が変わる。こんなに時間をかけて作られているんだ」と、漆芸の世界の奥深さに驚かれる声もあるそうです。

あなたも普段味わえない集中したひとときを過ごせる、漆の絵付け体験をしてみてはいかがでしょうか。自分の絵付けした漆器が手元にあると、日々の忙しい中でも心にゆとりを持てる瞬間が味わえます。

長屋さんと山本社長。お店で出迎えてくださる雰囲気がいつも温かいです。

「八雲塗やま本」にて絵付け体験できるアイテムとその体験料(一例)
※体験するには事前に予約が必要です。(電話:0852(23)2525)
1)箸:1,650円(税込)
2)稲田姫之鏡:1,650円(税込)
3)コンパクトミラー:2,200円(税込)
4)御縁鏡:3,300円(税込)
5)雅小手鏡(本記事で体験したもの):3,300円(税込)
6)名刺入れ、小物入れ:3,850円(税込)
7)リングペンダント:2,750円(税込)
8)茶筒:3,850円(税込)
*価格は全て材料費込み。
*その他の器、アイテムはお店と要相談。
*オリジナルの図案を希望される場合は、当日に体験アイテムのサイズと
同じ大きさの絵柄の出力をあらかじめ準備してください。

絵付け体験できるその他の鏡の種類、写真左から御縁鏡、稲田姫之鏡、コンパクトミラー。

【八雲塗やま本(山本漆器店)】(JR松江駅下車徒歩15分程度、タクシー約10分)
所在地:島根県松江市末次本町45

電話:0852-23-2525
営業時間:9:30〜19:00
定休日:1月1日~3日
駐車場:本店横 松江大橋北詰東入
    大橋館 斜め前
    (軽・普通 二台 大型 一台)
URL:https://www.yakumonuri.jp/
長屋桃子さんのインスタグラム:https://www.instagram.com/momoko_nagaya/

カワモト タマコ

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東京都出身。「島根県の工芸、技術を次の世にも伝えていきたい!」と一念発起し、グラフィックデザイナーから松江市協力隊の松江工芸の魅力を伝える仕事に飛び込む。出...

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