料理家・minokamoさんと一緒に、器と盛りつけと写真を「楽しむ」夜。【第一回 松江 料理と器 イベントレポート:第二夜 ワークショップ】

料理家であり、写真家、フードコーディネーターのminokamoこと長尾明子さんをゲストに迎えたイベント「第一回 松江 料理と器」に密着! 今回は第二夜のレポートをお送りします。
作り手と使い手がであうから、料理と器ができる。料理家・minokamoさんと袖師窯・尾野さんが語る夜【第一回 松江 料理と器 イベントレポート:第一夜 トークセッション】はこちら
2月20日に行われた第二夜は、器に料理を実際に盛りつけて、写真を撮影するワークショプです。今回は、事前の買い出しや窯元さんめぐりから密着させていただきました!
「じげもん」を訪ねる松江めぐり
minokamoさんは旅をするとき「その土地のものを食べるチャンスを逃したくないので、必ず1枚プレートを持っていくんです。それと、ちっちゃなナイフも」
というほど、地の食材=松江でいう「じげもん」を大切にされています。今回も、畑地区で名産のほし柿小屋の生産者のもとを訪ねたり、ワークショップでつかう「じげもん」を求めて、地元の朝市やスーパーを巡りました。


「サワラがおいしそう!」「金山寺味噌がほしいな」
今回の旅で出会ったお気に入り食材のひとつ、島根県オリジナル野菜の「あすっこ」も購入しました。
さらに、著書の表紙にも使われている「湯町窯」と、前日にトークショーで対談された、尾野さんが代表をつとめる「袖師窯」も訪れ、あたらしい器との出会いも。

さて、どんな料理ができるのでしょうか…?
「じげもん」をたくさん仕入れたminokamoさんは、会場に早めに入って調理開始。
今回は少人数イベントなので、一軒家のようなレンタルスペース「アジュール」が会場です。


minokamoさんの手にかかった食材は、心なしか、生き生きして見えます。

そして…あっという間に盛り付け用の料理が完成!
さまざまなプロフェッショナル愛用の器たち
そうこうしているうちに参加者さんが集合し、ワークショップがはじまりました。
第二夜はプロフェッショナルが対象で、第一次産業や飲食関係、管理栄養士さん、器の作家さんなど、料理や器に仕事で関わる方々が参加。
それぞれが持参された器に、minokamoさんの料理を盛りつけ、撮影をします。
まずは参加者の自己紹介と、器紹介から。器は、ご自身の作品をはじめ、それぞれが普段使われているものを持ってきていただきました。



「娘が学校で作った器をもらったけど、使い方がわからなくて…」、「イギリスが好きなので、和を感じるイギリスの器を持ってきました」などなど、バラエティ豊かな器が集まりました。
器を魅せる写真撮影
そして、第一夜レポートの冒頭でもご紹介した、松江の作家「陶風舎」松本尚子さんの器写真についてのレクチャーがスタートします。


こちらは事前に「松本さん撮影の写真」と「同じ器」をお送りした上で、minokamoさんが撮影されたもの。
minokamoさんいわく「松本さんの写真も素敵ですし、私がご提案しなくても良いのでは(笑)と思うほどでしたが、違う雰囲気のご提案をさせていただこうと思いました」とのこと。
松本さんは、「器がシンプルで落ち着いた色なので、華やかにしようとカラフルなおそうざいを盛った」そうなのですが、minokamoさんの写真を見て「色をおさえたものを盛ることで、ふわっとした土物の器の感じが出るんですね!」と感動されていました。

「彩りよく盛るのも、もちろん良いんですが、私は『いただいた写真と対極にしてみよう』という気持ちで撮影してみました。器がやさしいマットな質感なので、料理も質感がマッチしたものをのせてみようと思ったんです」とminokamoさん。

器の柄や質感、そして何より器のもつ、やわらかい雰囲気が、より伝わってくるようです。
「松本さんは写真撮影に苦手意識があるそうで、盛り付けの撮影をされるときは、お気に入りのおそうざいを購入され、『撮影後のお楽しみ』を作ってらっしゃいました。ご自身でお楽しみ要素を作ってらっしゃるのがすごいなあと! 写真技術も大切ですが、一番は発信者が楽しんで取り組む姿勢が大切だなと思います」
写真撮影は、宝探しのように
今回はプロ向けということで、催事などに使用する写真についてもアドバイス。
「たとえば展示写真が1枚に限られる時は、プレートの上にコップや小皿を置いて重ね使いされると(上記クッキーとカップの写真)限られた1枚で、器使いの提案と複数の作品を伝えることもできますよね。季節感を出したい時は、その時期の葉をそえるのも良いですよ!」

さらに、陰影や、光の角度、やわらかさ、ロケーション選びなどのお話も続きます。
その中で印象的だったのは、「楽しんで」と何度もおっしゃっていたこと。
「撮影のために特別な道具や場所を用意しなくても、家の中にあるものや場所で、驚くほどすてきな背景になったりする。光の角度や対象物の角度も、自分の撮りたい写真にどうすれば近づくか、いろいろと試してみるのが大切です。子供の頃の宝探しと同じ気分で、撮影スポットや方法を見つけてみてください」
もっとすてきに、撮影したい!
「盛りつけも用途によって変わります。たとえば、余白を多くとると、『おもてなし感』が出る。お客さまをお招きするときは、余白のあるお皿を最初にお出しして、その後シェアできる大皿で出すなど、変化をつけることが多いですね」

ほかにも、
華やかなイメージにしたいとき→お皿と対極の色
やさしい、シックなイメージにしたいとき→お皿と同系色
など、見せたいイメージによって色味や質感を変えたりするというワザも教えてくださいました。
「柄ものの器は、盛りつけると隠れて勿体無いと思うことがあるかもしれませんが、食事後に柄が登場してくれるのも楽しいですし、そのときどきでどちらも良いと思います。器同士の組み合わせは、その方が集めたものは、ご自身の好みが反映されているので、卓上でケンカすることなく仲良くしてくれると思います」

「料理を撮影されるときに、どこで撮ろうかな、良い背景がないな、ということがあったりしませんか。ランチョンマットがなくても、日常使われてる手ぬぐいなども良いですし、私も、出かけ先ではエプロンを使うこともあるんですよ(笑)。『どうしたらもっとすてきになるのかしら』なんて考えながら、まずは日常あるものでぜひ色々試してみてくださいね!」
「昨日(第一夜)もお伝えしましたが、お気に入りの器は割れてしまうかも…と心配されるより、毎日をゆたかにしてくれるから、ぜひ使っていただけたら良いんじゃないかしら」

さらに、各テーブルを回って、個別にアドバイスもされたところで、お待ちかねの盛りつけの時間。
minokamoさんの料理を、持参の器に思い思いのスタイルで盛っていきます。



実際に盛りつけした様子がこちら!


いろんな器、いろんな盛り方で、ほかでは見たことのないような、賑やかな食卓ができあがりました!



ほとんどの参加者さんが、ご自身の料理と器だけでなく、他の方の盛りつけ写真も撮られていたのが印象的でした。そして、お楽しみの試食の時間。


最後に記念撮影をして、第二夜はお開き。

美味しい料理や盛り付けの工夫、撮影の工夫、コミュニケーションをたっぷり楽しみながら、参加者さんそれぞれのプロモーションや、スキルアップにもつながりそうな濃い時間でした。
私自身も、勉強になったのはもちろん「もっと毎日の料理や器を楽しみたい!」と強く思った2日間でした。
実は、minokamoさんに密着させていただいたとき、私も器をいくつか購入。
使うたびに、窯元さんの顔、そしてminokamoさんの笑顔を思い出すんだろうなあ、その日々はこの器がない未来よりも、ちょっとゆたかだなあ、と、この原稿を書く今も心があたたかくなっております。
「松江 料理と器」のこれから
ワークショップの模様をもっと見たい! という方に、minokamoさん作・皆さんの盛りつけ写真たっぷりの動画をシェアいたします。器と料理のコラボレーションをどうぞご覧ください。
このイベント、「行きたかった〜!!」という方もいらっしゃるのではないかと思います。
そんなあなた、イベントタイトルをいま一度、よくご覧ください。
「第一回 松江 料理と器」…そう、「第一回」ということは、「第二回」があると期待しても良いのではないでしょうか!
もし動きがあればSNSにて告知されますので、ぜひチェックしてみてください。
料理と器、そして写真を、もっと楽しめるようになるイベント「松江 料理と器」、今後の展開に注目です。

minokamo
長尾明子/郷土料理家、写真家、フードコーディネーター。岐阜県美濃加茂市出身。東京と岐阜が拠点。地域食材を活かした料理、日常の食卓が楽しくなる器づかいの提案も行う。郷土食のヒアリングもライフワークとしている。松江、出雲の窯元にも通い、ミートショップきたがきのコロッケが大好物。
近著の『粉100水50でつくる すいとん』(技術評論社)では、民藝の器を使用、表紙は湯町窯。料理旅からただいま(風土社)「ふるさと雑穀のっけごはん」(みらい出版)等の著書ほか、連載も多数。https://www.instagram.com/minokamo/