不器用さんでも大丈夫! 「藍てまり」を作ってみた 【まるで手仕事の小宇宙! 見ると心穏やかになる「松江和紙てまり」後編】

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→不器用さんでも大丈夫! 「松江和紙てまり」を作ってみた
【まるで手仕事の小宇宙! 見ると心穏やかになる「松江和紙てまり」前編】はこちら

工房には鮮やかな色合いの和紙てまりとは対照的に、藍染糸のグラデーションを活かした幾何学模様で作られたてまりもあります。シックで統一された美しさの「藍てまり」です。


「藍てまり」は、同じく「松江和紙てまり」を考案された先代の絹川ツネノさんが、安来市広瀬町の天野紺屋さんの藍染糸を使用して藍の濃淡5色を使い、コントラストの美しいてまりを作り上げたことから始まりました。
こちらも前編で触れた「松江和紙てまり」と一緒で、山陰の風土が生み出した歴史ある素材に繊細な手仕事が加わり、より一層深い趣のある作品です。

いざ、「藍てまり」体験にかかります。

前編で「松江和紙てまり」をなんとか作りあげた筆者。調子に乗り、別日に難度の高い「藍てまり」に挑戦してみました。こちらも素材は至ってシンプル。藍染の刺繍糸と針、元になる藍の糸を巻いてボール上にしている原形のものが材料です。

基礎線(てまりをかがる際に道標となる糸で引いた線)は地球儀のように見えます。

こちらを写真下のように基本的な「菊刺し」という半面かがる作業を体験しました。(なんと、「藍てまり」は初心者は片面2時間弱、すべて完成するまでには3時間余りかかります。)

刺繍糸3本取りでかがるのですが、一番難しいのが1本1本が交差せずに並列に並ぶように作業することです。

「藍てまり」は出来上がりの糸の光沢を出すためあえて「3本取り」でかがるそうです。

絹川さんのお手本のかがり方。3本糸がピシッと平行になっています。
筆者の手元。3本が少しぶれています。針でしごいて修正しつつ作業します。

作業自体は単純ですが筆者が裁縫に慣れておらず、針に刺繍糸を3本通すところから苦戦。しかしてまりに向かっていると素材が自然のもので穏やかだからか、作業しているとだんだんと心が静かになっていきます。そして、なんとか片面のみ完成。約4時間かかりました。

左が筆者が体験したてまり。中心が若干いびつ。右が幾何学の形がピシッとしている作り手さんの「藍てまり」。

体験した日は午後から作業を始めたので工房が閉まる時間になってしまい、片面だけを仕上げてタイムアップ。
作りそびれた裏面は、後日また工房に伺って仕上げることにしました。

実際に藍てまりを体験される他のお客様は、地元や住まいが近い方は2日分けて体験され、遠方の方や1日しか取れない場合は自宅に刺繍糸と針を持ち帰って続きの作業ができるそうです。


帰りがけにふと、てまりを展示しているお部屋を見ると、作り手さんの凄さが改めてわかりました。
素人目にはどのように作られているのか分からない、幾何学的な模様の集大成の世界が広がっています。思わず息を飲む筆者。

代表の絹川令子さんは言います。
「『松江和紙てまり』『藍てまり』の魅力は、出雲民藝紙、天野紺屋の藍染めが可能にする繊細で暖かみある表情です。そして、一人一人作り手の個性で違う表情のあるてまりが仕上がります。
てまりの模様それぞれにも意味があり、例えば『麻の葉模様』は日本古くから子供の健やかな成長の願いや、魔除けの意味もあります。昔から作り手の、人々の穏やかに日々を過ごす願いが込められているんですよ。」
なるほど、てまりの小宇宙のようにぎゅっと詰まった魅力は、作り手の願いも込められているからなんだと気づきました。

帰り、松江城付近のお堀あたりをそぞろ歩きしました。すると、
見慣れた道ですが、細かいものの作業をした帰り道のためか堀川とお城周りの緑が余計清々しい気分にさせてくれます。
松江の歴史や繊細なものづくりに触れとても充実した1日でした。

お堀を見ながら松江和紙てまりの工房を訪れ、てまりを作り慌ただしい日常から離れて静かな時を過ごす休日。てまりのように穏やかに、心豊かな時間が過ごせておすすめです。

【松江和紙てまり工房】
所在地:島根県松江市内中原町244-4
電話:0852-33-7973
営業時間:9:00~16:00
定休日:火曜日、木曜日(希望あればオープンも可能。)
見学、体験希望の方は事前に要予約。
駐車場:2台あり
Facebook: https://www.facebook.com/松江和紙てまり-105559011181699/

カワモト タマコ

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東京都出身。「島根県の工芸、技術を次の世にも伝えていきたい!」と一念発起し、グラフィックデザイナーから松江市協力隊の松江工芸の魅力を伝える仕事に飛び込む。出...

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